悪夢

もくもくと白い煙が辺りを覆い視界を隠し、
ほんのりと香る石鹸の香りが私を癒やしている。
身体に触れる暖かいお湯は私を溶かすように気持ちがいい。
お湯でぬれた髪が額や顔に引っ付く。
私はゆっくりとまどろんでいた。
―いいご身分だね―
私はふと聞こえた声に身体をこわばらす。
とうとう現実であいつの声を聞くようになってしまったのか。
今から起こることに不可解な気持ちはぬぐえないでいた。
―何もしないよ。
だいたい兄さんが裸のときに襲うなんて悪趣味なことはしたくない。―
ルックは声を薄く立てて笑った。
確かにこの格好は情けにだろうな。
―ねぇ、そんなにお風呂気持ちいいの?―
突然の質問に私は驚きを隠せないでいた。
いつもの問いではないのだ。
―まぁせいぜい、僕の分まで味わってよ。―
クスクスと笑う声はいつも私をどん底に突き落とすものだった。
ルックなんで君は私の前に現れるんだ。
考えれば不思議なことだった。
いくら私が兄?とはいえそんなに親しくないはずだ。
―言ったはずでしょ?
兄さんあんたは唯一僕が哀れみを覚える相手だって。
同時に憎くもあるよ。
どうして僕の気持ちを分からないんだってね。―
お前と私は違う。
―そうそれが原因なんだよ。
僕は失敗作だけど、兄さんは違うもの。
同じ生まれなはずなのに僕は地下牢、あんたは上にいた。
憎いよ。―
そんなこと私は知らないし君の言うことは信じられない。
だいたい君の存在だって知らなかった。
―嘘吐き。―
ルック?
彼の出した声は悲しそうにかすれていた。
―知らなかっただってよく言えるよそんなこと。
あれだけって今の君に言っても仕方なかったね兄さん。
覚えてないんだもの。―
前にあったのか?
―そんなこと気にしないでいいよ。
それよりも破壊者の金髪の男が暴れまわてるんだって。
片付けなくていいの。―
なんで知っている。
―兄さんが知ったことは僕も知ることができるんだよ。
信じられないって顔してるね。
兄さんのおかげで外でも話せるようになったんだよ。―
僕はそんなこと望んでない。
「ササライ様誰と話してるんですか?」
部下のディオスだ。
だいぶ長かったから心配したんだろう。
「気にするな」
―お邪魔みたいだね。じゃまたね。―
もうくるな。私は心の中で毒づいていた。
 
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ちょっと進展。

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